世紀末の年のゴールデンウィークの前くらいに,新しいノートパソコンを買った.それまで使っていたのはシャープのメビウスくん,液晶の美しさに誘われついふらふらっと衝動買いしたのが三年ほど前.今でも十分使えるんだけれど(大したことしてるわけじゃないし),ずっと使ってると不満もでてくる.
ってな感じだ.ハードディスクとかフロッピーディスクとかメモリとかは個別で買えばすむことなんだけど, CPU とか液晶となるとそうはいかない.
最近パソコンの値段も下がってきてるみたいだから,安いのをもう一台買うことにした.通販だと, SPEC 的には結構いいのが安い値段で売ってる.
エプソンダイレクトの Built To Order .BTO は, CPU とかハードディスク容量とかメモリとか,ある程度自分で決められるのだ.でもまあその辺はフトコロ具合と相談して,適当に・・・
約一週間後,届いた新しいノートパソコンの名前は,エンデバーくん.
正式名称は Endeavor NT-1000 という. CPU は Celeron450 ,ハードディスクは 10G ,メモリは 64M 乗せている.
わーいディスプレイが大きい!・・・メビウスくんに比べるとあんまりきれいじゃないけど.まあシャープと比べたら気の毒だよね.・・・でもメビウスくんてば三年も使ってて,翻ってこのエンデバー君は買ったばかりの新品なのに.
エンデバーくんには,ハードディスクが 10 ギガある. Windows をふつうに使うぶんだけじゃとてもじゃないけど 10G は要らない.余ったスペースにはいまはやりの Linux を入れてみたらどうだろう? どーせタダだし!
何の目的もなく,こうして YURI の Linux 氏との無謀なおつきあいは始まった.
わたしの UNIX 経験といえば, SUN の Solaris 上で C のへろへろなプログラムを組んだくらいである.・・・なんて言うと,結構凄そうな気が自分でもしてくるが,実際のところ,与えられたものを与えられたままに使うだけ.与えられたログイン名とパスワードでログインし,使っていたのは vi と cc くらいで, vi のタブの設定なんかがちょっと気に入らないけど,どうやったらカスタマイズできるのか・・・というより,カスタマイズができることすら知らず,こういうものなんだろうと思って使っていた. vi 以外にエディタがあることすら知らなかったのだから.
しかし,自分のパソコンに Linux を入れるとなると,当然ながら,自分が root になって管理をしなければならないのだ.やることが全然違ってくるはずである.
・・・とりあえず,入れてみようか.それで,手に負えなければ消せばいいし.
さて.
おつきあいのためには相手のことをよく知ることが基本である.敵を知り己を知れば百戦危うからず・・・って,意味が違う.
まずは情報豊富な知恵袋,ホームページを探すことにする. Linux 関係のホームページは,玉石混淆,驚くほどいっぱいある.この中でも「玉」といえる総本山的存在は,
http://www.linux.or.jp/
である.ここの情報量はすごい.・・・どこから手を着けたらいいのかわからないほど.
RedHat, Turbo, Devian, Vine, Slackware, Plamo, Kondara ・・・何じゃこりゃ,って感じである. Linux は Linux じゃないの? 何でこんなにいっぱいあるの?
一般的に,「 Linux 」というときには,「カーネル」と「その周りのアプリケーション」をひっくるめた一つのシステムをさす.
「カーネル」は文字通り Linux の核たるものだが,「カーネル」だけではふつう,使い物にならない.そこで,「カーネル」に,使いやすくするためにいろいろアプリケーションをくっつけて,そういったものをひっくるめて Linux として提供しているのだ.うんざりするほどいっぱいあるディストリビューションは,それぞれ,この周りのアプリケーションや提供するサービスの違いによるものらしい.
このディストリビューションの中に,商用というのがあってわたしはさらに混乱した. Linux ってタダじゃないの? 商用って,お金取るんだよね?
そう,確かに Linux のカーネルはタダである.あと,ほとんどのアプリケーションもフリーソフトだ.だから,「カーネル」+「フリーの周辺アプリケーション」のみで構成されたディストリビューションはタダである. Devian とか Slackware とか Plamo とか Kondara とかいうのがこれにあたる.開発している人もサポートしてくれる人もみんなボランティアだ.
これらフリーのディストリビューションはインターネット経由で, FTP 使って好きなだけダウンロードできるし(むちゃくちゃファイルサイズが大きいのであんまりいい方法とはいえないけど),本屋で売ってる Linux 関連の雑誌や書籍の付録でついてくる.
Linux のアプリケーションはほとんどフリーと書いたけれど,中には,利益目的の企業が開発した商用のアプリケーションなんてのも存在する.たとえば JustSystem なんか,最近, ATOK とか一太郎 Ark みたいな Linux に乗っけるためのアプリケーションを開発している.
こういう商用のアプリケーションやユーザーサポートがくっついており,商用アプリケーションとユーザーサポートに対する対価を取ろうとするものが RedHat とか Turbo とか Vine などの商用のディストリビューションだ.まあ対価といっても,もともと Linux の本体はタダなわけだから, Windows なんかよりずっと安いけどね.
ふーん, RedHat とか Vine は要するに「お金のいるディストリビューション」なんだ.・・・と思っていたら,これもちょっと違うらしい.商用のディストリビューションに対して支払うお金は,あくまでも商用アプリケーションとユーザーサポートに対してのものだ.ということは,ディストリビューションの中から商用アプリケーションとユーザーサポートを抜いてしまえば,タダになる.フリーのディストリビューションと同じで,書籍の付録や FTP でタダで手に入れられるから,こういうのを FTP 版というらしい.
「ディストリビューション」については何となくわかった.で,どのディストリビューションを使えばいいの?
個々のディストリビューションについての説明を読んでいると,何となく,どのディストリビューションがどういう特徴を持っているか,だいたいのところが分かってくる.・・・というか,分かったような気になってくる.インストーラーが至れり尽くせりなのが簡単でいいよね.自分で好きなようなシステムをカスタマイズするなんて今のわたしには絶対無理だし.そういうのやってみたいような気もするけど.
でもやっぱり今ひとつよくわからない. Linux で何をやるかが決まっていればそれなりに選びようがあるんだろうけど,わたしはただ単に入れてみたいだけなのだ(威張って言うようなことじゃない).
まあ何にせよ,適当なビギナー向けの本には,おまけに Linux のインストール用 CD-ROM がくっついているみたいから,それを買えばいいや・・・と本屋に向かうことにした.
コンピュータのコーナーには, Windows ほどではないが, Linux 関係の本もいっぱい並んでいる.めまいがするほど難しそうな本から,絵入りの易しそうなのまで.なんと, Linux 氏はあの「超図解」シリーズにまで登場するのである.スーパー初心者としてはやっぱりこれを買うべきだろうか?
いろいろ見渡していると,本屋なのにソフトの箱を平積みしているのに気がついた.
TurboLinux Workstation 6.0 ,初回特典 VMWare つき!
VMWare のなんたるかも知らないくせに,「特典」の文字に惹かれてついふらふらとレジに向かう YURI の姿があった.