メガフロート体験記(2000.8)


旅行ではないけれど.

ちょっと変わったものを見てきた.

横須賀の沖,海の上に浮かぶ滑走路,メガフロートである.メガはギリシャ語で巨大,フロートは英語で浮体.この「ギガ」や「テラ」の時代に,「メガ」程度ではとても巨大とは言いがたいけれども・・・.

正式名称は,「超大型浮体式海洋構造物」という長ったらしいもの.海の上に鉄板(?)を浮かべて,これが飛行場として使えるかどうかを研究しているのだそう.

研究施設なので,普段は一般の人の立ち入りはできない.それが一般公開をするという話を聞きつけ,こんなチャンスはめったにないぞと応募したわけである.希望者多数で抽選となったのだが,8倍の難関をくぐり抜けて見事当選したのだ!・・・ただしわたしではなく友人が.で,その友人にくっついてわたしも見に行ったわけだ.まさに持つべきものはくじ運の強い友! であろう.

応募当初の予定では,この見学は五月にあったはずなのだが,直前になって日程変更の連絡が入り,そのまま無期延期されてしまっていた.そして三か月の時を経て,いまやっと見ることができるのである.長かった・・・.

メガフロートを作っているのは,「メガフロート技術研究組合」で,いろんな造船会社や工場からなっている.
そして肝心のメガフロートは,追浜にある住友重機械工業株式会社の造船所の沖に浮かんでいる.ということは,研究組合のメインは住友重機なんだろうか.

ともかく,京急追浜駅前から出ている送迎バスにて住重に向かう・・・どーでもいいけど送迎バスなのに運賃取るのね・・・.

このあたりは,右も左も工場だらけ.特に日産の工場が多い.そーいえば日産のテストコースもこの辺にあるはずだ.塀が高すぎてぜんぜん見えないけど.

そうこうしているうちにやたらとでかいクレーンが見えてきて,なんとなく,造船所っぽい趣になってきた.まだ組み立てられていない船(になる前の鉄のカタマリ)がいろんなパーツに分かれてごろごろと転がっている.

巨大な車両運搬船も留まっていた.PANAMA・・・パナマ船籍だ.まだ車両は積んでいないようで,舵が見えるほど喫水が浅くなっている.

ここでバスから降り,パンフレットをもらってモータボートでいよいよメガフロートに向かう.

近づくと・・・

メガフロートの横腹(というのだろうか?)に「立入禁止・衝突注意」とでかでかと書かれているのがなんとなくおかしかった.上には,自転車に乗って走っている人の姿が見える.

モータボートから下りてみると,だだっ広く平たいところに,黒いアスファルトと白いライン.まさしく滑走路だった.

「幅六十メートル,長さ一キロ,厚み三メートル」だそうである.その上に,敷かれたアスファルトの厚みは八センチだそうだ.

「長さ一キロというと,前に乗った空母の三倍はあるねえ」

・・・このじーさんは,どーやら軍事ヲタクらしい.

しかし三メートルという薄さには驚いた.一キロの長さに,三メートル.まるでぺらぺらの板だ.しかも,喫水はわずか一メートルだというのである.普通のずっと小さい船でも,喫水も高さももっとあるはずだ.

喫水が小さいというのはつまり,軽いということだ.メガフロートの中は,区画ごとに仕切られている以外はほとんどがらんどうなのである.もっとも,バランス調節のために水を入れたりもするが.
そのうちの一区画に入ることができたのだが,まさに殺風景な船の狭っ苦しい区画という感じだった.このスペースを利用して災害救難用に食料とか毛布とかを積み込んではどうかという話もあったらしい.暑さで下手すりゃ缶詰がバクハツするよーな気もするが・・・.

海に浮いているものだから,当然そのままではどっかに流れていってしまうので,流れないように六本の杭で止めてある.長い杭を海底に打ち込み(このへん,水深は14〜20メートルくらいあるらしい),その杭にメガフロートをつないでいるのだが,ここは海の上,四方八方からの波風も干満もあるのでいろんな工夫がされている.

どういう工夫かというと・・・う〜〜んどういう風に書けばいいのかな〜〜〜.絵で描けば早いんだけど,面倒くさいし.

四方八方からの波風の影響を考えると,四方八方がんじがらめに縛りつけるのがもちろんいちばんだ.でもそんなことすると,せっかく海に浮かんでいるという自由度が失われてしまうし,海底に固定するとなると作業も大変だ.それにだいいち,海の深さってのは一定じゃないから,海底に完全に固定してしまうと,潮が満ちたらメガフロートが海面下に潜っちゃう,ってことになる.

どうするかというと,メガフロートに穴を開けて,その穴のところに,海底から垂直に立った杭を通すのである.杭とメガフロートはくっついていないから,海の深さが変わっても,メガフロートは杭の周囲を上下するだけだ.また,四方八方の波風の影響も,この杭でくい止められる.

あ〜〜なんつーわかりにくい説明.すいません文章力ないわ.

メガフロートの上には

実験的に芝生を植えている場所もある.確かに飛行場なら芝は不可欠だ.目にも優しいし.

ただし今のところは,水とか食料とかは全部陸から運んでいるそうで,廃棄物ももちろん陸にお持ち帰り.メガフロート自体は本当にただ浮かんでいるだけのシロモノらしい.なら電気はどうなるの? と思ったら,電気は小さな発電機で作っているそうだ.足の真下にひろ〜〜いスペースがあるのだから油だろうがエンジンだろうが発電機だろうがいくらでも詰め込めそうな気がするが,実用化されて実際に飛行場として使われるようになっても陸に繋がれるわけだから,確かに必要ないと言えば必要ない.

航空機の離発着の実験をするから,小さいながらも管制室もある(管制塔とはとても呼べない・・・).中にはコンピュータが並んでいる.小さな発電機で作った電気はこういうところで使われているわけだ.

結構風が強く,それなりにさざなみもたっていたのだが,これだけ大きいとまったく揺れを感じない.揺れても数センチということだから当然だけど.

しかし台風のときなんかはどうなるんだろう.・・・ということで今年の台風には結構期待していたらしいのだが,台風の進路はそれてしまった.関東地方のふつーの人にとってはありがたいことだが,メガフロートの関係者にとっては残念なことだった.

気象の問題とともに忘れてはならないのが,地震の問題である.メガフロート自体は海面に浮かんでいるから地震自体の影響はないのだが,問題はメガフロートを一定の場所にとどめるために海底に打ち込んである六本の杭だ.これについては,このところの地震でデータが結構集まっているらしい.

また,地震自体よりずっと問題なのが地震に伴って起こる津波である.あまり大きな津波がくると海面が上がりメガフロートが持ち上がる.しかし杭の位置は当然変わらない.すると,杭があまりにも低いと,メガフロートが杭の上を通り越してすっぽ抜けてしまうという可能性がある.これについてはまだデータがないので,今までよそで起こった地震などから計算しているそうだ.

さてこのメガフロート,残念ながら,まもなくすべての実験を終了して解体処理に入ってしまうそうである.集めたデータ,研究成果を取りまとめて実用化に向けることになるのだが,ここで問題になっているのが解体後の各パーツの行く末である.膨大な量になるが,このままでは単なる鉄屑,スクラップだ.せっかく海に浮かぶように作ってあるのに・・・.

というわけで,ブイなどへの再利用の可能性についてもいろいろとはかられているらしい.

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