美術にしたしむ(2002.6)

製薬会社の美術館

明石海峡大橋の完成のおかげで本州にぐっと近くなった徳島県の鳴門市に,知るひとぞ知る大きな美術館がある.

ポカリスエットで有名な,大塚製薬所有の美術館である.所蔵されているものは,ポンペイの壁画だの,どっかの教会の天井画だの,グレゴだの,ダ・ヴィンチだの,ピカソだの,世界に散らばる名だたる作品千点以上.

ただし,作品を作ったのは大塚製薬.

そう,すべて,レプリカなのである.大塚製薬の技術の粋を集めて,有名な絵画を陶板に焼き付けたものだ.

製薬会社と陶板と,今ひとつ関係がよくわからないが,偽物とはいえ,これだけの絵が一堂に会すなんてことはありえないし,すべて原寸大で複製しているというのも興味を引く.

駐車場から美術館までは少し距離があるので,その間は大塚製薬のバスで送り迎えしてくれる.カロリーメイトを持つ宇宙人という,なかなかシュールな絵が描かれたバスである.

バス

ちなみにこの美術館は,入館料がむちゃくちゃ高いのでも有名である.入館料三千円を泣く泣く支払い,中に入ると,目の前にあるのは途方もなく長いエスカレーターだった.

エスカレーター

エスカレーターのうえには

これだけ上ったのだから,てっきり,いったん最上階に上って,下りながら絵を見ていくという構成に違いない,と思っていたのだ.

しかし,それは大間違いだった.そこは,地下三階だったのだ.どうやらこの美術館は,山の斜面に立っているらしい.

大塚美術館は,地下三階から地上二階の五階建て.縦長なのだが,一フロアの面積もかなり広い.ただ歩くだけでも四キロほどあると聞き,歩く前からげんなりする.

ではただいまこれより,写真発表! 小さく,しかも暗いのでわかりづらいけれど・・・

傷みや剥げ落ちたところも,そのまま再現して陶板に焼き付けている.

キリスト 竜退治

タペストリー

キリストの受難

最後の晩餐 モナ・リザ

最後の審判

見ていてすぐに気づくのが,宗教画がやたらと多いこと.キリストの受難やら,最後の審判やら,いろんな人のキリスト像が見られる.

グレゴの衝立

やはり光の当たり具合が,なんとなくつるつるしていて陶板っぽい.

壁に描かれた扉 円柱の鏡

ゲルニカ

モネの庭には,本物の睡蓮だけではなく,モネの絵が四枚,焼き付けられている.

モネの庭 モネの庭 モネの庭 一階の庭園

館内にある階段.空中に浮いていて,けっこう怖い.

階段

とにかく中は,恐ろしいほど広かった.じっくり見て歩くと,とても一日では見きれない.お昼を食べる時間もそこそこに,結局,開館から閉館までフルに美術館に居座ってしまった.それでも,まだ物足りないくらいだった.

閉館時間に追われるように,長いエスカレーターを下りる.このエスカレーター,上るより下りるほうが怖いかも.

エスカレーター

美術館&喫茶店

鳴門市民は,美術品がわりと好きなのかもしれない.

大塚美術館から程近い(といっても歩いていくのはかなりほねだが),徳島県と香川県の県境付近に,これもまた,地元ではけっこう有名な喫茶店がある.

UZU珈(うずか,と読みます)というこの喫茶店,コーヒーが一杯千円もする割にたいした味ではない・・・という理由なんぞではなく美術館喫茶として有名なのである.

「日本最大の喫茶店」と銘うち,優雅にお茶をしながら,数々の骨董品を鑑賞する.

駐車場も,喫茶店にしてはかなり広く,駐車場の片隅には「日本最小のチャペル」までできている.ここで結婚式をし,喫茶店にて披露宴をするという非常に廉価なカップルもいるらしいが・・・.

とにかく,大塚美術館にしろUZU珈にしろ,なんとなく優雅な気分にひたれる場所ではある.

TO HOME