津山ぶらぶら

自動車学校を卒業して.

そのまますぐに家に帰ってしまうというのもなんだかつまらないような気がしたので,教習所に程近く,帰り道でもある,津山というところに寄ることにした.

JR津山駅の前には小さな商店街があり,そこを抜けると,吉井川という大きな川が流れている.駅前よりも,吉井川の対岸のほうがずっと開けている.駅前よりだいぶ大きな商店街もある.

吉井川は,かつて高瀬舟が運行し,「ごんご」と呼ばれる河童の住む川なのだそうだ.昔は,吉井川にかかる橋をなんと毎年架け替えていたらしいのだが,今はもちろんそんなことはなく,今津屋橋という非常に立派な橋がかかっている.

さて,今津屋橋を渡り,鶴山通りをひたすらまっすぐ歩いていくと,右のほうに,津山城跡である鶴山公園がある.そのすぐそばに観光センターもあるのだが,今日は月曜で休みなのである.

観光は明日にまわすことにして,今夜は商店街をぶらぶらすることにする.自動車学校にいたとき,無性に食べたくてでも食べられなかったラーメン屋さんを見つけ,思わず入ってしまう.

味は決して満足の行くものじゃなかったけれど・・・まあしゃーないわね.

おなかもいっぱいになったので,駅前に取ったビジネスホテルに向かうべく歩き出し・・・また道に迷う.えらく古びた街並みに入り込んでしまった.暗くてよくわからないのだが,どーもお寺のような重厚な門がそこかしこにある.

古いものはわりと好きだし,明るければ観光する気にもなるんだけどねえ.

とりあえず駅に向かうには吉井川を渡らなきゃ.適当に歩いていると,ようやく吉井川らしい大きな川にたどり着く.

高瀬舟の発着場跡がある.大名行列の絵なんかもあった.城見橋という,歩行者専用らしい細い橋がかかっているが,どうやらこれは今津屋橋の一つ下流にある橋のようだ.こうして,ようやく駅前に戻ってきた.

翌日は・・・雨.

再び吉井川を渡り,鶴山通りを北上して観光センターに行ってみると,インターネット体験コーナーと書いてある.え? どこどこ? とあたりを見回すが,それらしいものはどこにも見当たらないんですけど・・・.

きょろきょろと探し回っていると,土産物屋の隅の,荷物を積み上げたそのさらに奥に,電源すら入っていない旧式のデスクトップがほこりをかぶっていた・・・.

まあいいか,と,そのあたりの地図をもらって観光センターを後にする.

鶴山公園は桜の名所らしいのだが・・・ちょ〜〜っとだけ,季節がずれていたようである.八重桜が少し残っているだけで,みんな葉桜.しかも,つつじを見るにはまだちょ〜〜っとだけ早い.ちょうど桜とつつじの間の空白期間に訪れてしまったわけだ.

さて,鶴山通りをさらに北上し,次は衆楽園というところに向かうことにする.多少距離があるので,大きな通りをひたすら歩いて行く.途中,通りの名前を書いた立て札が立っている.

城北通り,か.へ〜〜,「じょうほく」じゃなくって,「しろきた」って読むのね.

・・・アレ?

この通りって,鶴山通りじゃなかったっけ?

観光センターでもらってきた略地図を引っ張り出し,にらめっこである.えーとここにお寿司屋さんがあるから・・・.

鶴山通りは南北に伸びる通りで,さっきまではこの通りを北上していたはず,だった.ところが,いつのまにか,鶴山通りに直交して東西に伸びている城北通りを東に向かっているのである.

・・・なんで? いつの間に右折したわけ?

まるで,狐につままれたような気分である.

仕方なく軌道修正してしばらく歩くと,衆楽園に到着した.

衆楽園は,池が主体の綺麗な公園で,さほど大きくはないけれど手入れが行き届いていている.もみじが多いので,秋は紅葉が池に映えてさぞ綺麗だろう.

衆楽園を出て,うろうろしていると,宮川という川に突き当たった.鶴山公園の西を流れる川だ.「城北橋」という橋がかかっているのだけれど,「しろきたはし」って橋の名前が書いてある,その傍らに,ちっちゃな階段のおもちゃがくっついているのがおもしろかった.一段1cmもないくらいのかわいいやつだ.

宮川に沿って,鶴山公園の西を南下する.しばらく歩くと,川の上に何か色とりどりのものが広がっているのに気づいた.

こいのぼりの群れである.こいのぼりを,宮川の河岸から河岸へと渡しているのだ.

その下を,白いものがちらちらと動いており,よく見ると水鳥らしかった.名前は知らないが・・・.

水鳥は,川面に細い足で立ち,足を曲げたり,一歩歩き,なんだかためらったようにまた足を戻したりしている.何をやっているんだろう?

宮川は浅い川なのだが,川底に少し段差があり,その段差のせいで,水の流れがそこだけ速く,小さな小さな滝みたいになっている.その滝の半ばに水鳥は立ち,下流に向けて足を曲げたり伸ばしたりしているのだ.足を一歩踏み出せばつるっと滑るかもしれない,でも戻るに戻れない・・・そんなことを考えているのかどうかはわからないが,妙にユーモラスな水鳥の姿だった.

さて,鶴山公園の東側の鶴山通り,北側の城北通り,西側の宮川と,鶴山公園のぐるりを一周したわけだが・・・なんかみょーに,ライオンズクラブ寄贈の文字があちこちで目につくなあ.

渋い街並みをうろうろ.

こういう古さはけっこう好きだ.古い看板があり,ちゃんと先祖代々の商売をしていたり.なんか味があるなあ.

古いのか新しいのかよくわからない建物がある.建築様式は古そうなのに,変にきれいなのだ.よく見てみると,「寅さんロケ地」と書いてあった.

途中,旧宅を開放して展示してあるところもあったが,周りの家も同じくらい古いから,全然目立たない.しかもその周りの家は,ちゃんと人が住んで商売していたりするのである.

「城東むかし町家」として開放してある旧宅は,長い間,建て増ししたり改築したりを繰り返してきたらしく,江戸後期・明治・大正それぞれの建築様式をがすべてひとつの家の中に残っている.土間には人力車まで置いてある.庭も見事だが,なぜか池の水がかれていた.

わ・・・なんだろあれ.

明治的洋風建築な赤レンガ塀の中に,純和風木造建築の家.洋学資料館だそうだ.いかにもなるほどという建物である.このミスマッチというか,アンバランスさは面白い.

お菓子屋さんの前を通りかかる・・・考えてみたら,わたしとしたことが,全然食に走ってなかったわ.

「津山銘菓城東の栗ぐり」:しっとりした焼き菓子.栗はつぶして生地に混ぜ込んである.

「津山名物ぼっこうまんじゅう」:はて,「ぼっこう」って何かしらん.表面にグラニュー糖をまぶした焼饅頭である.知るヒトぞ知る,讃岐銘菓「かまど」の表面をグラニュー糖処理した感じ(なんかかえってわかりにくい?).

「津山城東焼」:レーズン入りの,分厚いクッキーとケーキの中間みたいなの.

ふらふらしているうちに,東津山駅に到着してしまった.無人駅なのはともかく,切符の自販機すらないのは驚きである.来た電車は,当然ワンマン列車だし.

東津山の次の駅が,津山.出発点に戻ってきた.

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